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「結ちゃん、好樹は。」
好樹の両親が病院にきたのは、五時過ぎだった。
「はい。」
尚、私は泣いていた。泣いて同情を誘えるような立場ではないのに。
案内した病室に好樹はいた。みたこともない器具を取り付け、顔は半分以上包帯が巻かれその表情を確認することはできない。
「好樹っ。好樹……。」
その姿を見た途端、母親はベッドにもたれかかった。思わず私は目を背けてしまった。
「好樹さんのご両親でいらっしゃいますか?」
「はい。そうですけど…好樹は。好樹はどうなるんですかっ。」
「では、あちらで。」
両親は医者に案内され別室へと移った。
この部屋には私と好樹だけになり、妙な器具が【ピッ、ピッ、ピッ】と音をたてながら規則的な波をつくっている。
「好樹、起きて。起きて。」
冷たい手を握りながら私は好樹に問掛けた。
ふと好樹の枕元をみるとボロボロになった携帯が置いてある。
手に取り裏側をみると、以前に撮ったプリクラが几帳面にはられていた。
そこで再び私に現実の重みがのしかかった。
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