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病院に着くと私は真っ直ぐ病室へと向かった。
病室の前には看護婦が数名おり病室の中を除いている。
「あの、私…」
私が喋ろうとすると、その数名の看護婦は軽く会釈をし私を中へと促した。
中では担当医と好樹の両親が立って見ている。好樹の父親にだかれて母は泣いていた。
「あっ結ちゃん。」
父親が私に言った。
「好樹に何か話してあげてくれないか。」
「どっどうされたんですか?」
父親は私の問いには答えず、優しく微笑み好樹をみた。
「わかりました。」
私は好樹の横に座り手を握った。
すると僅かではあるが人指し指が動いた。
「好樹。私だよ。結だよ。」
私は好樹の名前を呼んだ。
それに答えるかのように唇が微かに動く。
この光景を見ていた父親も涙を流していた。
「驚きました。私も長いことやっていますが初めてです。奇跡としかいいようがありません。」
担当医が説明をした。
「この後好樹は喋れるようになるんですかっ?歩けるようになるんですかっ?」
私は興奮していた。
「まだはっきりとは言えませんが、恐らく会話が出来るくらいにはなるでしょう。後は彼の頑張り次第です。」
その後も私は好樹に話しかけ続けた。その度に好樹は唇を動かした。
「大丈夫。ずっと私がついてるよ。」
好樹の目からは涙が一滴こめかみへと滑り落ちた。
それは好樹がはじめて流した涙。
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