15人が本棚に入れています
本棚に追加
そこの桜並木はすごい事になっていた。
無数に散る花びらはまるで雪のようにゆっくりと空中を漂い、落ちては波のように地面を滑り行く。桜吹雪と例えるのが一番いいだろうか。
「好樹。綺麗だよ。すごい。」
好樹をみると黒ぶちのメガネをかけていた。
事故の影響で視力が低下したと医者は言っていた気がする。
「あっ。」
私は思い出した。
以前ここに来たとき好樹が言っていた言葉を。
好樹はこの光景を見ていたんだ。自分だと知らずに涙を流していた好樹。
あの瞬間から好樹は既に私の近くにいたんだ。
全てがこの桜並木の道のように一本の線になった。
そして好樹は大きく両手を広げた。その光景はあの時に行った夜の湖と重なりあった。
何があろうと好樹は好樹なんだ。
この瞬間、私はずっと好樹の傍らに居続けようと決心した。
「好樹。これから頑張ろ。」
今度ははきっりと頬をつりあげ笑った。
桜の散る頃に私は再び好樹と出会った。前よりも愛の深みが増して。
~END~
最初のコメントを投稿しよう!