第一章

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約束の日当日、私は待ち合わせ場所である駅前の花壇に向かった。 向かう途中何度引き返す事を考えただろう。張りつめた緊張の糸が私の足を止めた。 「まだ間に合う。でも……。」 早く顔が見てみたいという好奇心負け高鳴る鼓動を押さえつつ再びゆっくりと歩を進めた。 待ち合わせ場所に着くと何人かの男性が立っていた。全ての人が怪しく思えてくる。 約束では着いたら電話することになっている。私は携帯電話をとると昨日教えてもらった番号をゆっくりとうつ。しかしなかなか発信する事ができない。 うじうじ携帯を見つめていると見知らぬ番号から電話がかかってきた。 「あっ。」 私はとっさにボタンを押し電話にでた。 「はっはい。」 「あっもしもし。着いたけど結はもういるかな?」 電話の相手はまさしく彼だった。その声色は全く予想に反していた。少し高くはっきりとした特徴のある声。 「はい。着きましたけど。」 私は辺りを見回した。すると後方に携帯ではなしている男性がたっていた。 その男性は私に気が付くと近づいてきた。 「もしかして。」 電話での話声と前方にいる男性の口の動きが一致した。間違いなく彼だった。 「はじめまして。好樹です。」 「あっはじめまして。結です。」 彼の容姿も大きく予想から反していた。爽やかな笑顔に、風に流されサラサラとなびく黒い髪の毛。顔はかっこいいとまではいかないが、私のタイプであることは間違いなかった。 「じゃあとりあえず喫茶店入ろうか。」 彼は喫茶店を指さし私に問掛けた。 「はい。」 それから私達は喫茶店の中へ入った。
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