第一章

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外はまだ寒いと言うのに彼はアイスココアをすすっていた。 お互いにコップを持ちすすっては置いて、すすっては置いてを繰り返す。若干気まずい雰囲気が流れている。 「そういえばね。」 不意に彼が話をきりだした。 「僕、あのサイト利用するきなかったんだ。友達に誘われて断ったんだけど半強制的に。」 彼は鼻で笑うと再びココアをすすった。 「友達って?」 「あぁ、清美だよ。ここで彼女つくれって。」 私も清美に誘われていた。それも全く同じ手口で。 「私も清美に誘われたんです。彼氏作れって。」 彼は吹き出しそうになり、手で口を塞いだ。 「ったくあいつ。」 私たちは静かな喫茶店内で体を揺らしながら笑った。 その後すっかり打ち解けた私たちは、ビリヤード、ダーツ等を楽しんだ。 私は何でも引っ張っていってくれる彼にどんどんひかれていた。 ―これが年上の男性なんだ― 年上といっても彼はまだ21歳だ。同年代からみたら恐らく大人っぽいのではないだろうか。 そして私は彼の車で自宅まで送ってもらった。 「じゃあまたね。」 「うん。」 私も彼の車が見えなくなるまで見送った。 彼は最後にクラクションを一回鳴らした。 ―彼と会えたのは偶然?いや清美の事だから私たちが引かれ合うと思って仕組んだんだろうな― 私自身既に彼にひかれていた。 「ただいま。」 私は二階にある自分の部屋へ向かうと、携帯を取り出し彼へメールをうった。 「今日は…ありがとうございますっと。送信。」 ふと窓の外を見ると、家の前に咲いていた桜はほとんど散っていた。
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