第一章

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カーテンを開くと眩しい日差しが部屋全体を明るく照らした。 「良い天気。」 窓を開けると肌寒い風が、体を滑り抜けた。そして大きく息を吸い込む。こうすることで目が覚めるのである。 「よし。今日も頑張るか。」 私は一階に降りると洗面所へむかった。 蛇口をひねると水道からは酷く冷たい水がながれた。あえてこの冷たい水で顔を洗うのが日課になっている。 いったん二階へあがり私は今日着ていく服を選ぶことにした。やはりどこに行くにしても服にだけは気をつかいたい。今日は普段よりも気合いをいれて選ぶことにした。何と言っても今日は彼と会う日だから。 「これも違う。これも。これも。」 気合いを入れたはいいがなかなか服が決まらない。 「あっ。この前買ったスカート履いて行こうかな。」 私は真新しいスカートを袋から出すと鏡の前で合わせた。 「これにしよ。」 ようやく服が決まりふと時計をみると、時間は九時二十分。 「やばっ。もうこんな時間。」 待ち合わせ時間は十時だった。恐らくすぐに着替えて、家を出ても九時四十分。ここから待ち合わせ場所の花壇まで約二十分。ギリギリ間に合うかギリギリ遅刻するかだった。 「早くしないと。」 焦れば焦るほど行動に支障がでる。 服を着替終るとバックの中に化粧道具、鏡、タオルをいれた。この状況に応じてもしっかりと化粧道具を入れていた。何故こんなにも持ち物が多いのだろうか。 私は急いで部屋を出た。階段を音を立てて降りる。 「行ってきます。」 玄関のドア開けると太陽の光が全身を包んだ。 足元では散った桜の花びらが風に吹かれて踊っていた。
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