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「ごめんなさい。」
私は本屋にいた。そして第一声は謝罪の言葉。結局私は10分遅刻した。
「いいよ。もうちょっと遅く来てくれたらこれ読み終えたのに。」
彼は優しく微笑みその一言。
やはり爽やかだった。そしてさりげないその優しい一言。文句なしに私にとって彼は完璧な男性だった。
「じゃあ行こうか。」
そう言うと彼はすたすたと店の外へ向かった。後ろからみるととても背が高く見える。周りの人とくらべてもその差は一目瞭然だ。低く見ても180はあるだろう。
「今日は僕の車のドライブに付き合ってね。」
「ドライブですか。はい、喜んで。」
私は彼の顔を見上げて言った。何故か前回会ったときよりも背が高く見えた。
「さっ、どうぞ。」
とても紳士的な振る舞いでドアを開けた。その姿からわざとらしさは感じられなかった。きっと慣れているのだと思う。
車の中は整理されていて、尚且あの独特な車の匂いはしなかった。
「じゃあ出発進行。」
たまに見せる無邪気な顔が私の心を擽った。
「どこに行くんですか。」
助手席で私は呟いた。
「着いてからのお楽しみ。」
真っ直ぐ前を見ながら微笑んだ。
「あっ何か聞く?」
「えっと、好樹さんのおすすめを。」
「そっ。じゃあ、これかけよ。」
彼は信号待ちの間にCDをセットした。
流れてきた音楽は。
―風に戸惑う弱気な僕 通りすがるあの日の影―
サザンオールスターズのTNAMIだった。
「これが僕のおすすめの曲。」
「はい。」
晴れの日には少々似合わない曲だが、私はすぐに引き込まれていった。
そしていつしか夢の中へ入っていった。
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