第一章

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「ごめんなさい。」 私は本屋にいた。そして第一声は謝罪の言葉。結局私は10分遅刻した。 「いいよ。もうちょっと遅く来てくれたらこれ読み終えたのに。」 彼は優しく微笑みその一言。 やはり爽やかだった。そしてさりげないその優しい一言。文句なしに私にとって彼は完璧な男性だった。 「じゃあ行こうか。」 そう言うと彼はすたすたと店の外へ向かった。後ろからみるととても背が高く見える。周りの人とくらべてもその差は一目瞭然だ。低く見ても180はあるだろう。 「今日は僕の車のドライブに付き合ってね。」 「ドライブですか。はい、喜んで。」 私は彼の顔を見上げて言った。何故か前回会ったときよりも背が高く見えた。 「さっ、どうぞ。」 とても紳士的な振る舞いでドアを開けた。その姿からわざとらしさは感じられなかった。きっと慣れているのだと思う。 車の中は整理されていて、尚且あの独特な車の匂いはしなかった。 「じゃあ出発進行。」 たまに見せる無邪気な顔が私の心を擽った。 「どこに行くんですか。」 助手席で私は呟いた。 「着いてからのお楽しみ。」 真っ直ぐ前を見ながら微笑んだ。 「あっ何か聞く?」 「えっと、好樹さんのおすすめを。」 「そっ。じゃあ、これかけよ。」 彼は信号待ちの間にCDをセットした。 流れてきた音楽は。 ―風に戸惑う弱気な僕 通りすがるあの日の影― サザンオールスターズのTNAMIだった。 「これが僕のおすすめの曲。」 「はい。」 晴れの日には少々似合わない曲だが、私はすぐに引き込まれていった。 そしていつしか夢の中へ入っていった。
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