2.ここまで振り回されたのは初めてだ。

6/16
前へ
/237ページ
次へ
  教室に入っても、視線が突き刺さってくる。 広瀬とは席が離れているので、やっと一旦離れられた。 来て早々ぐったりしている俺に、啓介から哀れみの視線が向けられる。 「お前大変だなぁ。まさかオッケー貰えるなんて思ってなかったんだよな」 「そりゃそーだよ。元々玉砕覚悟だったさ」 加藤に対して、だけどな。 広瀬のことは昨日初めて知ったんだから、あいつに対して悩んだことは一切無かったし。 まさかこんなことになるなんてなぁ…。 「うげっ!」 「こーおー。あたし黄が傍にいなくて、寂しかったぁ」 「ほんの数分だろうがっ」 後ろからのしかかる様に抱き着かれ、前のめりになる。 重いわけじゃないけど、いきなりやられるとちょっとなぁ。 広瀬は、俺の前席にいる啓介に気付いた。 「あ、美島くん、だったよね?」 「あれ?俺なんかのこと知っててくれたんだ?」 「うん。だっていっつも黄と一緒だったんだもん。あたし、キミ嫌い」 「「…へ?」」 思わず俺と啓介の声が重なった。 広瀬はその整った眉を寄せて、啓介を見る。 俺は抱き着かれているから表情は見えないが、何故かみんな顔を青ざめていた。 ? 「何で啓介が嫌いなんだ?」 「だって、あたしの黄にずーっとべったりなんだもん!」 「そりゃ友達なんだから仕方ないだろ」 「むー…」
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7886人が本棚に入れています
本棚に追加