2.ここまで振り回されたのは初めてだ。

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  「…あ、あの…ほら…でももう、黄の彼女は海内なんだし…」 「黄って呼んじゃ駄目!あたし意外はみんな名前を呼び捨てにしちゃ駄目ー!!」 「…広瀬…」 振り向くと、広瀬は泣いていた。 多分、お嬢様だから、ずっと甘やかされてきたんだろうなぁ。 我が儘言っても、全部通ってしまう。 そんな、夢のような世界で、広瀬は育ってきたんだ。 …。 パシンッ 何かを叩いた音が響く。 教室は静まり返り、誰もが驚愕の色を隠せない。 痛い視線が、もういつのまにか、気にならなくなっていた。 広瀬は、赤くなった自分の頬を押さえて、その大きな目をより一層見開いて俺を見ていた。 「…自分の我が儘が、何でも通ると思うなよ。社会ってもんを学べよ! 俺の彼女なんだから、俺に合わせるよう努力してくれよっ」 「…黄…」 啓介が驚いて、俺の名を呟く。 無理もない。 女の子に弱い俺が、初めて手を挙げたんだ。 しかも、あの広瀬に。 俺は知らないうちに、泣いていた。 「…あたし…誰にもぶたれたこと、ないの…」 「あ…ごめん…俺…」 「初めてぶたれた。痛いって、こんな感覚なんだね」 「…ひろ…」 「やっぱり、黄は素敵!」  ……………………は? 誰もが唖然とした瞬間だった。 「あたし、社長令嬢でしょ?そのうえこーんなに可愛いし、中身もいいし。 だから、誰も対等に見てくれなかったの。 でも、黄だけは違う。黄は、初めてあたしをシカトした人だもん!」 …シカト? …………あ。
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