2.ここまで振り回されたのは初めてだ。

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  そういえば、啓介に言われたことがあった。 とある日の、体育授業。 その日は久々に男女混合で、ドッチボールをした。 俺は加藤の敵チームで、加藤がボールに当たって怪我でもしないかと、ハラハラしながら見守っていた。 すると、そのせいでよそ見をしていたため、後ろからボールが飛んできた。 「黄!」 「ん?」 啓介の呼び声を聞き、俺を呼んでいるのだと思って啓介の方に駆け付ける。 そのお陰で、ボールは俺の真横すれすれを飛び抜けていった。 俺は平然とした顔で首を傾げる。 「何?呼んだ?啓介」 「…お前なぁ…」 「?」 俺がまた首を傾げると、皆が笑い出した。 あの加藤も。 俺はその笑った顔に、見惚れていた。 だから 「杉島くんって、面白いんだね」 なんて言葉をかけられたことに、気がつかなかった。 他にも色々あるかもしれない。 無視しちゃったかもって思うような出来事はこれくらいしか覚えてないからなぁ。 「あたし、黄がもっと好きになっちゃった!」 「…え…おわっ!」 広瀬に飛び付かれ、後ろによろめきながらも、しっかり受け止める。 細い体。 でも胸は結構あるみたいだ。 抱き着かれたらいつも当たるんだけどなぁ…。 確信犯なのか? 先生が入ってきて、本日の朝の騒動はこれにて終了した。
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