1.俺ってホント馬鹿。

5/6
前へ
/237ページ
次へ
  海内は真っ直ぐに俺の方に歩いてきて、俺の横で停止した。 この世のものとは思えないほど可愛い顔が俺を見下ろしている。 あれほど騒がしかった教室が、一瞬で静かになる。 …は? え、何? 俺になんか用なのか? 俺は一人首を傾げていた。 「…あの…何…?」 「これ」 すっと差し出されたのは、数十分前、俺が加藤の靴箱に入れた手紙だった。 俺はびっくりして、立ち上がる。 「そ、それ、俺の!」 ざわっ 教室がまた煩くなる。 けど、海内が手を鳴らすと、また一瞬で静かになる。 俺は内心慌てながら海内を見ていた。 な、何で海内がこれを…! 「これ、ホントに杉島の?」 「…そ、そうだけど…」 「…や…」 や? 「やったぁ!!」 「うぉわっ!」 急に海内に飛び付かれ、俺はバランスを崩して後ろに倒れる。 尻餅をついて、腰も痛い。 そのうえ凄い締め付けだ。 な、何々? 何なんだ!? 「あたし、前から杉島が好きだったんだよねー!」 「はあっ?」 何、どういうこと? 俺は混乱していた。 海内は俺と向き合い、瞼を閉じて顔を近付けた。 唇に柔らかい触感がする。 …はぇっ? 「宜しくね、黄!」
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7886人が本棚に入れています
本棚に追加