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海内は真っ直ぐに俺の方に歩いてきて、俺の横で停止した。
この世のものとは思えないほど可愛い顔が俺を見下ろしている。
あれほど騒がしかった教室が、一瞬で静かになる。
…は?
え、何?
俺になんか用なのか?
俺は一人首を傾げていた。
「…あの…何…?」
「これ」
すっと差し出されたのは、数十分前、俺が加藤の靴箱に入れた手紙だった。
俺はびっくりして、立ち上がる。
「そ、それ、俺の!」
ざわっ
教室がまた煩くなる。
けど、海内が手を鳴らすと、また一瞬で静かになる。
俺は内心慌てながら海内を見ていた。
な、何で海内がこれを…!
「これ、ホントに杉島の?」
「…そ、そうだけど…」
「…や…」
や?
「やったぁ!!」
「うぉわっ!」
急に海内に飛び付かれ、俺はバランスを崩して後ろに倒れる。
尻餅をついて、腰も痛い。
そのうえ凄い締め付けだ。
な、何々?
何なんだ!?
「あたし、前から杉島が好きだったんだよねー!」
「はあっ?」
何、どういうこと?
俺は混乱していた。
海内は俺と向き合い、瞼を閉じて顔を近付けた。
唇に柔らかい触感がする。
…はぇっ?
「宜しくね、黄!」
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