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「何だ?今の音は……」
駿也がチョコレートをかじりながら呟く。
……こいつは、こんな時でもチョコレート食うんだな。
呆れを通り越して尊敬するよ……。
「……あ」
「何?」
「あれ見て」
短い言葉を二三度交わし、駿也は前方を指さした。
俺はその方向を目で追った。
よし、まず先に言っておこう。
うちの高校のドアは全て横開き式だ。
ノブがついていて、押したり引いたりして開けるドアとは違う。
よって、ドアを押してもびくともしない。
だって横開き式なんだから。
しかし、だ。
今、その横開き式のドアが……本来有るべき場所と正反対の壁まで吹っ飛んでいた。
さっきの間抜けな擬音は、ドアが吹っ飛んだ時の音だったのだろう。
俺を含め、生徒達はそのドアを呆然と眺めていた。
そして、気付けていなかったのだ。
そのドアに気をとられ、ドアを吹き飛ばした原因が、すぐそこにいた事に。
「あいたたた……頭を打ってしまった……」
その男はそんな事をいいながら、教室に入ってきた。
短髪。
整った顔立ち。
なんというか……まるで武士のような雰囲気を醸し出している男だった。
クラス全員の視線がその男(うちの高校の制服を着てるってことは、うちの生徒なのだろう)に集まる。
「すまぬ、勢い余ってドアを吹き飛ばしてしまった」
ちょっと待て……あいつさっき、頭を打ったとか何とか言ってたよな……。
おいおい……まさか頭を打った勢いでドアが吹っ飛んだとか言うんじゃないだろーな……。
と、その時。
廊下から必死に誰かの名前を呼ぶ声が聞こえた。
「成くーん! 待ちなさい……待って……!」
息切れしながら入ってきたのは俺らの担任だった。
「うわっ……何これ! 何でドアが!」
いつもにまして騒がしい先生に向かって、成と呼ばれた生徒が応える。
「すまない先生、拙者が頭を打った拍子に吹っ飛ばしてしまったのだ」
やっぱりかーっ!!
そして拙者ってなんだ拙者って!!
いくら武士のような雰囲気だからって……はっ! まさかさっきのは伏線かぁっ!!
無数とある突っ込み所に一通り心の中でつっこんでおく。
まったく状況把握が出来ていない俺達を置いてきぼりに、先生と謎の生徒が何やら話をし、暫くして生徒の方が口を開いた。
「拙者、岩波成と申す。転校生だ」
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