生と死 または、愛と渇望

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 或る朝、人気もない、ひっそりと冷えた空気が張り詰めていた。息苦しい環境下、そしては誰もいないリビングの机上に、ぽつん、と於かれた、母親絵美が残して行ったと思わしい書置きと、千円札が一枚、朝食、とともに、何も訴えかけることなく、唯、普遍に置かれていた。 「周介へ、今日も仕事、遅番。夕飯、此銭で賄うように。母より」  霧志真 周介と言う男、15才なる母子家庭の一人息子である。小学校一年生の時春、父親と母親の絵美は離婚を致された。そのときの様子ですら此の男は、ある記憶の中にあるか否かの言葉を散り散りにした挙げ句、残った二、三文字程度のそれを、たどたどと促せばなんとかうっすら思い出せる程しか覚えてない様子であったが、良い記憶など一つかしこなかったようである。糾い、唯、母に対して尊敬はしていたようだが。  この年まで育て上げてくれた恩意とやらを思い持っていた。  周介は学校へ行かなくてはいけないことを、蒔、ふっと思い出し、冷め切ったベーコンと卵焼きと熱すぎる珈琲を一気に腹中へかきいれ平らげてしまいました。 「さて、支度をしなくて、いけない、どうするか」  そう呟くと、部屋に戻り、すぐさま、冷え切った身体から、素早く学生服を着こみいれ、近しい或る最日に母親から無理して買ってもらった、近々受験祝いにいるから、と、先に機械と言うやらを祝い金で買ってもらい、それを日置出しから取り出して、それ含めの、かせっとてえぷとやらも拵えてもらっていたので、それを憂い嬉しく微笑みながら取り付終えて、早々と階段を下り、自宅の扉を開け通り機械を回し、鍵を手に、鍵穴廻しては、早々と家を飛び出したのです。早すると、鋭い冷め果てた風荒らしのような突風が、私の肺、やられそうに難ありしながら、そしてやまたなり気を失いそうになってしまいましたが、なんとか、難なく気を取り直し、私は駐輪場所に向かったのです。余りに不得意な運動を、この冬間、放ってしまいましたから、何故に固まってしまうかの程、駄目だったのです。  ですが、私は生きている情感を、有り余り持ち得ているこの性とともに、すぐさま捨て去りたくありたいと今なを願っています。そのようですから、やはり損な気さえ、降りかかりそうになり、なにぶん不快に憎く思っておりました。
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