生と死 または、愛と渇望

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 駐輪して或る自転車に乗り込もう、そのように思い立ちました。そばに寄りかかっていた自転車からすこしだけ離れ、機械を取り収め、器用にも親指を使い、てえぷを回し始めた。 「ふむふむ、と、本日はどれを拝聴しようかしら」  この男は、見える機械上のくるくると回る黒いびにいると、同時に鳴るかさかさとした音とともに、それは数学の文字列式のようにしゅうるだと思えた。焦点を視野と人差し指の先、含め次いでは親指と手のひらに程良い手加減をくわえ込んで、文字化されそうになる、この今日の季節に、自然はたそがれてしまいますが、色変わりするまでには、と、空に指廻し、空知らぬ間に、機嫌こころ良く、その冷めたろっく、と、表記されかけた一番目の言葉達、それまた綺麗に色変わり、そうして風とともに軽く流れ流れては、その冷たいろっくとやらをに、夢中になり、そんなふうに息繁く、ながら、乗り込みは人気のない道の朝を、走り出そうとし、その一端なる、その場所に、わたくしは息吐いていたのです。
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