生と死 または、愛と渇望

6/7
前へ
/15ページ
次へ
 霧志真 周介(Kirishima Shyusuke)と呼ばれる其の男、十五才。都内公立中学校に通う中学三年生である。もうこの時期、冬二月にもなると、学校教師達はなにこれつけて進路進路と、怒鳴りつけては、どこにも居場所がなくなっていく生徒など放りに放り、捨てていく。そんな学校ではあったし、強制悲鳴あり気かしら、そんな性格をした男だった。所詮、現代に似合わない、居残ったような男、ここに至る。周りの学生達と言えば、真面目に塾や講習会に脚通わせ、進路一点張り集中し、習知以上の知識を無理やりそのように知恵得ようと必死に、必然性のない強制環境に耐えながら、心狭しく、時に苦しく、衆知如何、とは。認めてもらうその日まで。この終わることなく去ることなくな日々に唯、沈黙し、自らを押し殺しながら生き続けているのであります。その様にも思えがたしい。  もちろん、かの男も、そんな悩める受験生ではあったが、当の本人、頭は上の中辺りの頭は持って居り、他人との関わりを極力遠ざけようとする性質だったので、余り心苦しいと思うことは人知れず無かったようだ。普通知よりは、と、言えるところだが……。母親も特に心配などしておらず、そういう面は、しきょく安易なところがあった。何ゆえ、息子が高校に受かればいい、とは考えていたが、本人からすれば、都内都立高校に進学しようぐらいにしか考えていなかったのだ。その理由と言えば、無言……または、近いところが良い。と言ったところ。夢は無かったが、したしげく茫然と一人が好きな性だったゆえに、友人はいないが。我がクラスでの自己的位置付は、いるかいないかはっきりしない空虚な存在……それでいいではないか、ましてや虚無ではないのだから。と申すのであった。つまりどちら付かずともあり、あちら付かずでも良い、そんな存在であった。このように大名義すれば良いのかしら。そのように自ら思っているし、他人にもそう思われているはずだ。だったらそのほうが自分らしい。クラスでは、無論、私趣味合頷き者などいない、と今年の夏まで独り思っていたが、この学年に、ただひとり、櫛沢誠(くしざわまこと)と言う、背高いのっぽうな男がいたのは、この世の果てだ。  出会った当初、男はその様に思っていた。  
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加