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  「だから、俺試験受けてないから分かんないんですって」 呆れたように昌浩は言う。 「あーうんうん。ならここがどういう場所かも知らないと」 「学校じゃないんですか?」 「いや、学校だよ?特殊なね」 「特殊?なんかほかと違うとこがあるんですか?」 「ここは人殺しの専門学校だから」 振り向いた千鶴はなんのことはないと肩をすくめた。 空気が凍る、という表現方法があるが、今この場においてそれは実に的を射た表現だった。 歩みは止まり、千鶴から発せられる異質な気配に射抜かれた昌浩はさながら蛇に睨まれた蛙のようだ。 「人、殺し…?」 「正義を殺し、ひいては正義を殺す者を育成する機関。それがここ、平安学園の存在理由だ」 「そ、そんなもの…!」 「そう、そんなもの法が許すわけがない。だからここは秘匿される。公式にこんなとこ無いんだからな」 「でも、だって……そんな」 混乱する。 あの祖父がそんなものを創ったのかと。 信じられない。 信じたくない。 「千鶴、バカなことを言って相手を混乱させるな。このバカめ」 後ろ頭に軽い衝撃を受けて、昌浩はハッと覚醒する。 さっきまでぐちゃぐちゃしていた思考は一切なくなっていた。 目の前では千鶴が声を殺して笑っている。 「安倍昌浩だな?」 背後からした声に振り向くと、千鶴と同じ白ランを着た生徒が立っていた。 「五年の黒咲武魅だ。校長から任を受けて迎えに来た」 「あ、ありがとうございます」 一瞬出かけた言葉を飲み込んで昌浩はお礼を言った。 本人を前にして言えるわけもない。 ちっさ!などとは。 武魅の見てくれはどう見ても百五十あるかないかであるから、そう思うのは初対面なら仕方ない。 仕方ないが思わずにはいられなかった。
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