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  だがしかし、この日だけは違ったのだ。 その桟橋にふらりと、背格好からすればまだ中学生かそこらの少年が近づいていったのだ。 この少年も実に異質であった。 ボサボサの髪は伸び放題になっているし、服はズタボロだし、靴も履いていなければ、まるで乞食のようだった。 少年は桟橋を見つけると、安堵のため息と共に何やら怒りの入り混じった表情をすると、疲れきった体に鞭打つようにずるずると先端まで歩いていった。 当然兵士たちは持っていた銃を突きつけるが、少年が一枚の紙を渡すと無線でどこかへ連絡した。 返答があったのか兵士たちが少年に話しかけるが、彼らが話すのは英語なわけで少年にはまだ通じなかったらしく、男たちは顔を見合わせると笑顔でOKと繰り返し、指で丸を作って少年へ示した。 さすが米軍。 ノリはやはりアメリカ仕込みである。 それでようやく理解したのか、少年は年相応の笑顔を見せてからその場に倒れ込んだ。
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