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  保険医に礼を言って校内へと出ると、誰一人の影もなかった。 どころか人のいる気配すらない。 異様というよりは異質である。 とは言え、誰かに校長室の場所を聞かないことにはどうしようもない。 保健室に聞きに戻ることも考えはしたが、そこまでお世話になるのは気がひけたようだ。 とりあえず見物がてら探してみようと二階に上がった途端、ヒンヤリと首筋に刀の刃が当てられた。 「動くな」 耳元でぼそりと呟かれた声に動きを止める。 「所属科、学年、クラス、名前を言え。今日は放課後立ち入り禁止だと念入りに言ったはずだが?」 刀の刃が切れるギリギリまで食い込む。 「陰陽科一年の安倍昌浩です!諸処の事情により今日到着したばっかりなんです!」 慌てて答える昌浩。 一応手も上げてみて無抵抗を主張してみる。 「安倍…?校長の孫か?」 「孫言うな!」 禁止ワードに触れたのか、昌浩は首に刃が当てられていることすら気にせずに振り返る。 相手はその気迫に圧されたのか、瞬間的に刃を引っ込めたため切れることはなかったが。 振り返ると同時に袖から出した符を相手の胸に貼り付ける。 「縛縛縛、不動縛!」 簡易化した呪によって相手の動きを拘束する。 「いいですか!少なからず初対面の人間に向かって孫だのなんだの言っていいわけないですよね!しかもあのクソ狸の孫だなんて!言っていいことと悪いことがあるんですよ!」 「お前の理論からすれば、初対面の人間に孫呼ばわりはいけないが、術をかけるのは良いと?」 良いわけがない。 「千鶴」 とそこに割り込む相手が現れた。
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