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  一秒もない間にその姿は鮮明になるくらい近付いてきた。 人間である。 黒の学ランを着た、しかし先の生徒は若干異なるデザインではあるが、どう見てもここの生徒だ。 「死ねえええええええ!!!」 しかも何やら物騒なセリフを叫びながら手には両刃の剣を握っている。 直線上には昌浩が、その前には白ランの生徒が盾のように立っている。 というか動けないでいる。 五十メートルの距離を一秒強で駆け抜けた生徒は、突然の出来事に昌浩が術を解く間もなくその剣を白ランの生徒に突き立てた。 はずだった。 「ヨトラシーゼの作品か。なかなか良い業物使ってんな」 貫かれたはずの生徒は、しかし両の口端を吊り上げて凶悪そうに笑みを作っていた。 「だが選択肢が甘かったな。その程度じゃあ、俺は倒せない」 縛られて動けないでいるはずの生徒から、恐ろしいまでの殺気が溢れ出る。 今まで修行だと言われて何度か死線さえさ迷った昌浩でさえ、心の底から冷えるような殺気。 「あ、あ……ぁ」 怯えるように後ろずさった生徒の視界に、悠然と佇む他の生徒が映る。 その場で逃げるのが最善ではあったが、恐怖に支配されて思考がまともに働かない彼にとってそれは無意識の行動だった。 「あああああああ!!!」 先ほどと同じように剣を構えて突撃する生徒は、それを振り上げたところで動きを止めた。 否、止められた。 腕に、足に、胴に、幾重にも鎖が巻きついて彼の行動を阻んでいたのだ。
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