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C.E.30年代にピークを迎えた遺伝子改変ブームによって、人類は新たな対立の図式を作り出すこととなった。
受精卵の段階で遺伝子を操作されて生まれた、『コーディネーター』と呼ばれる新たな人類は、旧来の人類『ナチュラル』にとっての脅威となった。 彼らコーディネーターは知力、体力、すべての能力においてナチュラルを凌駕し、その数こそ少ないものの、学術、スポーツなど、あらゆる分野のトップを占めるようになる。やがてその格差が対立を生み出し、数において不利なコーディネーターは地球各地で迫害を受けることとなった。住み慣れた土地を追われ、彼らが目指した安住の地は、宇宙だった。
のちにコーディネーターたちの本拠地となる“プラント”は、C.E.50年代から着工し、エネルギー問題に悩む地球に、豊富な宇宙資源から得られたエネルギーと、無重力を生かした工業生産物を供給する役割を負っていた。その利益は一部の地球におけるオーナー国が独占し、彼らは“プラント”に武器と食糧の生産を禁じることで、自らの支配を確固たるものとした。
いわれのない支配と搾取。当然コーディネーターたちはそれに反発し、独占と対等貿易を地球側に求めた。繰り返し話し合いの場が持たれたが、そのたび決裂に終わり、両者の緊張は徐々に高まっていく。
そして―――
C.E.70年、“血のバレンタイン”の悲劇によって、地球、“プラント”間の緊張は、一気に本格的武力衝突へと発展した。
誰もが疑わなかった、数で勝る地球軍の勝利。が、当初の予測は大きく裏切られ、戦局は疲弊したまま、すでに十一ヶ月という時が過ぎようとしていた―――。
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