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「ハナマ、ブライアン、早く!
X105、303を起動させるんだ!」
女の声が格納庫に響く。
二人は思わず通路の下に目をやり、例のモビルスーツの陰に身を隠しながらライフルを撃つ作業服姿の女性に気付く。
奥にあったもう一体のモビルスーツの方から銃撃の音に混じって怒号と悲鳴が上がった。
敵がザフト兵というなら、彼ら圧倒的に不利だ。
ザフト兵は皆コーディネーター。
運動能力、視力、知力、判断力すべてにおいてナチュラルを凌駕している。
キラははっとした。
一人のザフト兵が、軍人らしいさっきの女性を、背後から狙っている。
思わず叫ぼうとする前に隣で仁亜が「うしろやッッ!!」と叫んでいた。
その声に女性は振り返り、敵兵を撃ち殺した。
そして、その上にいた二人に目を止める。
「――子供…!?」
女性が目を見開くのが見えた。
彼女は売ってきたザフト兵に打ち返すと二人に向かって怒鳴った。
「来い!」
「僕らは左ブロックのシェルター行くから大丈夫や!」
仁亜が大声で言うと女性はライフルを撃ちながら叫び返してきた。
「あそこはもうドアしかない!」
その言葉に足を止めたキラはためらいもなくその場から飛び降りた。
仁亜もキラに手を引かれ落ちる。
女性兵士は目を見はった。
落差は五、六メートルあるだろう。
もの柔らかなその外見にそぐわぬ敏捷さで、キラは猫のようにモビルスーツの上にキラよりも小柄な少年、仁亜を抱え着地したのだった。
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