153人が本棚に入れています
本棚に追加
「おおきに…;」
キラの首に腕を絡め捕まっている少年、仁亜が声を発する。
すると驚きに一瞬動きを止めた女性の背後でモビルスーツを守って戦っていた男が一人のザフト兵を打ち倒した。
「ラスティ!―――くそぉッ!」
赤いパイロットスーツのザフト兵が叫び、仲間の命を奪った男に銃を向ける。
放たれた銃弾が命中し崩れるように男が倒れた。
「ハナマ!」
女性兵士がその名を呼んだ瞬間、ザフト兵は振り向きざまに彼女へと再び銃弾を放った…だがそれが彼女に当たることはなく、間一髪で仁亜が彼女に覆い被さるようにして避けたのだった。
「Σ君ッ!?」
だが代わりに仁亜の脇腹に命中し血が飛び散る。
驚きのあまり目を見開くキラ。
「ぅぐッッー
(なんやこれ…夢や無かったん…?
痛いなんてもんやないッッ。
ドクドク脈打って…焼けてるみたいに熱いッッ!!)」
そんな事を考えるのもつかの間、弾づまりでもお越したのか、ザフト兵は手にしていた銃を捨て、ナイフを抜き放ち仁亜へとせまる。キラは思わず駆け寄った。
「ッッ…この人やったら…大丈夫やッ…キラっ
(大好きなキラにケガさせたないねんッッ)」
だがそんなキラに笑顔を向け彼女を隠し盾になるように立つ仁亜。
「―――――キラ…?」
仁亜のその言葉に唐突声を上げたのは誰であろう。
ナイフを構えたザフト兵だった。
キラは驚いてその顔を見る。
ヘルメットは、さっきの男の血で汚れていた。
だが炎の照り映えるバイザーごしに、その顔ははっきりと見えた。「…………アスラン…?」
キラの口からその名が、無意識に零れた。
仁亜はその声に相手の体が一瞬震えたのを感じた。
意思の強そうな緑の瞳がキラの姿を映して見開かれていた。
「(…アスラン…)」
そんな中脇腹を抑えながら
これがこの物語りとキラの波乱の幕開けなのだと泣きそうな顔になり
人知れず俯く仁亜だった。
最初のコメントを投稿しよう!