君と過ごした愛しい時間

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『ねえ、知ってる?』 そう言って、俺の瞳を見つめてくる莉音さん。 『ありがとう』 そう言って俺に微笑みをくれた莉音さん。 そして、最後の、いや、最期の笑顔―― 莉音さんは、もうどこにもいない。その事実だけが漠然と胸に襲いかかってきた。 「緋色、でてきなさい、早く」 「うっせーな! 姉ちゃんはどっかいけよ! 」 俺は、初めて姉ちゃんに反発したかもしれない。 今まで、姉ちゃんに逆らったことなんて、なかったから。 姉ちゃんが、小さく嗚咽を漏らしてドアの前から退くのが分かった。 階段を降りる音も聞こえてきた。 どうして、どうして、莉音さんが死ななきゃいけなかったんだろう。 犯人、捕まったらしいけどまだ生きてるんだよな。 なんで、莉音さんはもうこの世にいないのに、犯人は生きてるんだ? あそこは、よほどのことがないかぎり、死ぬことはないんだろ? 「莉音……さん……」 俺は、初めて涙が出た気がした。 莉音さんの名前を出すだけで、こんなにも涙が出てくるなんて。 胸が、張り裂けそうだった。心臓を取り出せば、楽になるのかな?なんて、頭のどこかで思ってしまった。 ああ、そうだ。心臓を取り出せば莉音さんのところにいけるかもしれない。
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