7.ズレる思いとユレる想い

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 ――場所は代わって町外れの廃工場、まだ日は高いが、トタン屋根の所々に腐食で空いた穴から入る僅かな明かりが薄汚れたアスファルトを照らしている。  普段なら訪れる者など皆無なはずの場所だが、ここにキョウカと直弥の二人が相対していた。  ツグミは余計な邪魔が(リーリスも含め)来ないよう辺りを見回っているのでこの場にはいない。  故に勝者と敗者がどちらになるのか、それを知ることが出来るのは当事者たる二人のみ。 「準備はいいのか、ナオヤ」 「あんまり意味はなさそうだけど、取り敢えずはな」  キョウカは見慣れた和服……なのだがかなり深いスリットが入っており、袖も振袖になっている。  直弥の方はといえば、ぱっと見は普通のカジュアルな格好をしているが、その本質は掛け離れていた。
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