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―――果て無き闇で彼らは語る。
「……どうやら奴は覚悟したようだ…」
「何の…覚悟だ?」
「今までの自分、過去の己を振り返り、良き日々の思い出にすがらず、荒れた自らを抱え込み、心の根本に存在する恐怖を受け入れた……」
「……それによって何が変わったんだ?」
「変わった?……それは違う。もしお前が奴の心の動きや葛藤を変化と言うのなら、それはあまりに些細なことであると言っておこう」
「些細」
「……肝心なのはこれからだ。過去や現在のことは全て先の未来を創りだす為に……既決された運命を狂わす為に必要な絶対要素なのだ」
「下積みの歴史だな」
「もう一度言おう、重要なのはこれからだ。奴に関わることで、関わった者の人生や運命がどのように変わるのか……見守ろうではないか、長き生の暇つぶしに、な」
「その関わる者達には俺達も含まれているんじゃないか?」
「……はっ、我々が変わることも有り得る、か。ならば聞こう、お前はどのように変わりたい?変わることに何を望む?」
「………」
「何も言えまい。我々は当に変わり過ぎてしまった。我々は謂わば、究極系。我々が変化し得る最後まで変わってしまったのだろう。これ以上の変化など望むまいよ」
「ならば……何故、奴の話をしているときのお前の目は、希望に満ち溢れているんだ?」
「……簡単だ。若者には力が、輝きがある。それに希望を見るのは当然ではないか?」
「……故に“若星”か。中々面白い話を聞けた、礼を言う」
「ふっ、名乗らずに去るのは失礼承知の上か?長い付き合いではないか、そろそろ“存在しない者”などという名前は飽いたぞ?」
「名前、か……それは違うな。俺は本来ここには存在しない者、だから名前も、自らを証明出来る物など何も無い……だが名前か……そうだな、“UNKNOWN”とでも名乗ろうか……では、また会おう」
「うむ、さらばだ………行ったか。それにしても“UNKNOWN”とは。くくっ、存在しないというよりは……“知られざる者”、ということか……ふっ、考えても仕方ない。眠るとするか……」
―――シンフォニア~CRISIS WORLD~
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