彩雲

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部屋を飛び出した私の前に、背の高い、見たことのない男が立っていた。     男は無表情な冷たい目で、私の目を見つめた。       驚いた私は動くことも出来ず、呆然としていた。         「お前が蘭丸か!」     「はい…」         「ほう… 可成に良く似ておる…」     そう言って男は私を抱き上げた。       「書物を読んでいたのか。 偉いのう…」     「… 」       突然の事に戸惑っている私に、男はこう続けた。       「儂は…弟を亡くした…   お前の父・可成と共に、大切な弟を亡くしたのじゃ…    人の命とは何と儚いものか…」       その男の頬を一筋の涙が伝い落ちた。      
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