清雅

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近江の冬は寒い。       雪がしんしんと降り、辺り一面に銀世界が広がる。         静かだった…         時折枝先の雪が “バサッ”…と音を立てて落ちた。         信長様は床の中で片肘をついて、 遠くを見ながら 何やら考えておられるようだ…       「熱いお茶でもお持ち致します…」       信長様は黙って私の手を引き、 体を抱きしめて来た。       「儂は…待っておる…」       「何をでございますか?」       「木曽の雪はいつ溶けるのか…」       「木曽…ですか?」       その木曽が… 木曽義昌の事だったとは その時知る由も無かった。           信長様は木曽義昌からの書状を待っていたのだ…      
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