若草

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「蘭丸、目を閉じて口を開けろ」       「はい…」         突然口の中に小さな甘い物が入って来た。     それは今まで味わった事のない、 小さくて、堅くて、甘くて、良い匂いがした。       「美味しい!初めて味わいました。 これは何ですか?」       「これはコンフェイト…と言って、南蛮菓子の一つだ。」       「南蛮…?」       「海の向こうの、遠い遠い国の事だ。」           私は目を丸くしてその男の話を聞いた。       「よいか…このコンフェイトは皆に内緒で持って来た。   蘭丸にやろう! 二人の秘密だぞ。」         私の耳元で、まるで内緒話のように小声でそう呟いて、 男は片手に握れるくらいの紙に包まれた十数粒のコンフェイトを、小さな袋に入れ、 私の首からかけてくれた。     その袋には織田家の小さな家紋が確かに入っていた。         少し悪戯っぽく笑った男の笑顔を私は初めて見た。     いつも冷たい目で、どこか遠くを見ていた男だったから、 私は驚きと、安心感に包まれた。       「ありがとうございます!   蘭丸の宝物に致します…」       私はそう言って満面の笑みを浮かべた。      
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