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「木村、君は三人の中で一番成績優秀だ。リーダーとしてみんなを引っ張るんだぞ。」
私は、今しかないと感じた。
あまり乗り気ではない事と。実は一番怖じ気づいている事と。
「先生、あの、孤島に向か……」
教授は私の言葉を遮るように語り出した。
「実はな……私は君たちに是非行って欲しいと考えてるんだ。」
私はこの時、話を遮り先ほどの話と矛盾することを言われ、かなり驚いていた。
この時ばかりは私の中で怒りが込み上げてんきたのに気が付いた。さらにそれは爆発寸前であるということも。
しかし教授はそんなこと知る由もない。話を続けていた。
「君たちにあの孤島の秘密を解いて欲しいんだよ。息子の死も……何かわかるかもしれないしね。」
「教授。我々が死んでもいいんですか?」
ついに怒りが爆発した。
身勝手な教授に、我々の命がかかっているとなると、怒りざるを得なかったであろう。
この時の私は、一見冷静のように見える。が、心の中は既に怒りが支配していた。その証拠に私の発したその言葉は、自分でも驚くほど重く鋭いものであった。
「行きたいと言ったのは君たちだ。そうだろ?」
「私は嫌ですね。他人のために命をかけるなんて。」
「他人の役に立つ研究とは、常に命をかけて挑むものだよ。」
「なっ……。」
私は返す言葉が無くなってしまった。
「私が行けたらいいんだが、もう歳でね。野宿で3日はキツいものがある。
待っていたのかもしれないな。君たちみたいな自分から調査に出かけてくれる人間を。」
私は完全に言いくるめられてしまったのだ。
心を支配していた怒りは、いつの間にやらどこかに消えてしまった。
「ゆっくりと、思う存分研究するがいい。
研究データはまた私に見せてくれ。君たちが帰ったら手厚くもてなすとしよう。」
「はぁ……ありがとうございます……」
私が帰ろうとしたときには、晴れていた空が暗く淀んでいた。
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