出発前日

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「事件?」 「やはり知らないようだね。まぁ知らなくて当たり前だが」 教授は棚から一冊のファイルを取り出した。 私はまだこの時、このファイルにどの様なことが記されているかなど、全く見当がつかなかった。 「見たまえ、25年前に例の孤島で起きた事件の資料だ。 当時少し話題になったが、結局真相は分からずに、皆の記憶からは消えてしまった。君たちはまだ生まれてないから知らないな」 教授は私にファイルを渡してくれた。 開かれたページを見た私は、背筋に冷たいものが走ったことを感じずにはいられなかった。 他の二人も顔から一気に血の気が引き、真っ青になってしまった。 <<1983年、9月。未開拓の孤島を調査中だった研究グループ3人が惨殺。 唯一船で逃げてきた男性は、『一人が謎の感染病にかかり発狂。研究員を殺していった』と証言。 数日後、警察が孤島を調査に向かうと、3体の死体とおびただしい量の血、そして餓死したと思われる男性の死体が有ったと言う>> 私はこの時、何かどす黒い、とても説明し難い恐ろしいものを感じたのだった。
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