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「マスコミには言わなかったが……あの孤島には感染病が存在するんだ。」
「感染病?」
私は息を呑んだ。感染病など初耳だったからだ。世間では飢餓から一人が発狂したものだと言われていたのだ。
「ああ。だが、感染経路はわからない。
知らない内に感染している。」
私は体を大きく乗り出した。
「俺たちの体験から、人から人には感染はしない、非常に感染力の弱い菌であることはわかった。
でも感染すると厄介だった。
感染……すれば発狂し、目の前にいる人を片っ端から殺しだすんだ。
潜伏期間は不明、さまざまな症状が現れた挙げ句、人を殺害するようになる。」
私は大きく目を見開いた。緊張のあまり、蚊の鳴き声のような声で喋るのが精一杯だった。
「さまざまな症状とは?」
「色の識別が困難になるようだ。それに……被害妄想が激しくなる。あとは、目の色が変化する……」
すると突然、彼の顔色がより一層青白くなり、今にも目が飛び出しそうなほど見開いた。
「あああ!思い出したくない!
あの悪魔のような目の色を!!!」
「あの……大丈夫ですか?」
彼はガチガチと歯を鳴らしていた。私は緊張のあまり心臓が爆発しそうだった。
「出てってくれ……」
「なっ……」
「1人にしてくれ!!!!!」
私はこの時、恥ずかしながら恐怖に支配されていたのだ。
言われるがままに外に出ようとした私に、彼は最後にこういったのである。
「最後に聞く……あんたは行くのか?あの孤島に……。
もし……もし仲間を連れて孤島に向かうなら……感染病には気を付けろ……。
感染者は殺せ、殺されるぞ……。」
恐ろしい言葉である。この言葉はこの日以来、私の心に常につっかかっていた。
私が彼と会ったのは言うまでもなく、これが最後であった。
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