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友人が出来た
白い壁から、日が経つにつれてくっきりと現れるヒトノカタチ
初めは手
気持ち悪いと思う反面好奇心が勝った
次第に出来てくるヒトノカタチ
どうやら女性だ
顔のカタチが現れるにしたがって、結構好みだと気付く
ワクワクする
とうとう全身が壁に出てきた
壁に出てきた時点で、完全に出てこなくなった
壁の友人に[名前]を与えてしまった
壁の友人の女性には[さおり]と名付けた
さおりの表情はどこか寂しげであった
会話が出来る事に気付いた
毎日が楽しい
そういえば壁の友人のさおりはご飯を食べない
なぜだろう
ある日さおりの輪郭が、また徐々に壁に戻りつつある事に気付いた‼
ボクの友人が消える…
ボクは絶望を考えた
イヤダ
ボクは必死だった
時に壁と友人を引き剥がそうとしたり
時に壁を切り抜こうとしたり
時に友人だけ別のなにかに移そうとしたり
だが皮肉にもさおりは日々壁に戻りつつある
壁に戻るであろう最終日
顔だけ残ったさおりとの最後の会話
最後の一言
〈ワタシノコトヲ
アイシテイマシタカ…?〉
ボクの答え
「もちろん‼」
さおり…
最後の最後に寂しげな表情からは涙のような壁の汗と…優しげな微笑みを残して…
消えなかった
次の瞬間‼
さおりは[ボク]を取り込んで消えた
ボクは壁の友人になり
寂しげに次の友人を待った
部屋の友人
完
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