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「じゃあ、真央は毎朝見てるだけで幸せなの?」
ミチルは下から真央を覗き込むようにして言った。
「違うでしょう?」
「そんなこと、ない…ょ?」
返事するのに時間がかかったのは、当たり前の事だったから。
ミチルの瞳を見れなかったのは、彼女が余りにも綺麗すぎたから。
この現状に不満があるわけじゃ…ない。真央は自分に言い聞かせるように心中で呟いた。
「ま、いいけどぉ?」
ミチルの唐突な言葉に、真央ははっとした。
「ふぇ、なに?」
真央が聞き返すと同時に、ミチルは椅子から立ち上がっていた。
その表情を見て、真央は体を強ばらせた。
ミチルはその面に妖しくも艶やかな笑みを浮かべていた。
ちなみに真央の経験上、ミチルがこういう顔をする時悪巧みをしている顔だ。
小さい頃、真央が男子にいじめられた時に「そういう顔」をして仕返ししたのがミチルだ。
その後、男子が真央に近づく事は一度たりとも無かったのだ。
「何をしたの」なんて真央が聞けたはずもない。
「な、何企んでるの?」
思わず顔を青くする真央。
「企むって何よ。ただ、今日って五限目席替えでしょ?」
ミチルは先程の笑みの片鱗も見せぬ、可愛らしい笑みを浮かべた。
「隣になれたらいいね。」
そう。「誰の隣り」なんて、真央が聞けるはずもないのだ。
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