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「続きまして、上杉千里先生。担当は2・3年生の現代文です」
始業式と続けて行われた就任式。
新任教師の紹介と挨拶がされる。
男子校だからなのか、教師が女性であるたびに生徒がざわつくのが目立って見えた。
「そして最後に、養護教諭の小田切智先生です」
「皆さん初めまして。ご紹介にあずかりました、小田切です」
壇上に上がり、智が挨拶を始める。
すると、それまで長い式典に飽きて寝かけていた亮一が、ピクリと反応した。
スピーカーから体育館に広がる声に、聞き覚えがあったからだ。
この声……
ふと、顔を上げる。
壇上との間を亮一よりも背の高い生徒が遮るが、何とか隙間から声の主を見ようとする。
そして視界が開けた瞬間、亮一の目に飛び込んできたのは智の姿。
…あ、やっぱり。
亮一は密かに微笑む。
まるで、これから始まるゲームを予感するように。
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