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バカみたいな端金に興味が有ったわけではない。 ただ、何もせずともトラブルに巻き込まれる容姿と、付随した喧嘩っ早さが原因だった。 小さく放たれた舌打ちにすら、過敏に反応する年頃だったのだ。 高校に進学して間もない頃だっただろうか。中学でも度々問題を起こしていた吾大に、兄からの最後の贈り物となったのは欲しがっていたブランドのオーダーメイドのシルバーチョーカーと、小さなバタフライナイフ。 「自ら危険に巻き込まれるなら、身を守る覚悟くらいしておけよ。傷つけるな、護るんだ」 兄の言葉と入学祝いは、今では遺言と形見になった。 どんな形であれ、家族を失う恐怖と絶望を…吾大は知っていた。 光流を家族だと言った少女の胸の内は分からないが、辛さは痛いほど分かった。 『金を取れよ。ビジネスなら辛くないだろう』 冷酷か優しさか、いつかの光流の言葉が頭の中に木霊した。
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