正義

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決して早くは無い速度だが確実に化け物との距離は詰まっていく。 ブツブツと呟くような、化け物のうめき声のような物すら聞こえる距離だ。 先手を取るために、ナイフを振り上げようとしたが化け物が一瞬早く頭上高くナイフを掲げた。 「just …kill ther!」 『叫び声』と共に真っ直ぐに降りてくる単調なナイフの軌道を逃れバタフライナイフを化け物の手の甲に突き立てる。 疑問符と共に頭が一瞬真っ白になる。 吾大の攻撃によりナイフを握れなくなった腕、濃く、黒に近い枯渇した赤を滴らせながら…その手は吾大の首筋に絡み付く。 「人間…?」 充血した目から、一筋、血が滴る。 「I just …kill you . sorry…my dear…」 それは、恐らく先入観だった。一撃でガタイの良い男子高校生の肩の骨を砕く、小柄な女などいない。 認めるのが怖かったのだ。 だが、同種の命を奪う恐怖が、抵抗する気力を凪いだ。 「なんなんだ、どうなってんだよ…死にたくねぇよ!光流!」 死にたくないと喚きながら死ぬための覚悟をした。 最期に浮かんだ顔は、消えたはずのアイツ。 探していたアイツ…藤堂 光流(とうどう ひかる)の、人を小馬鹿にした笑みだった。 『お前の欠点は、その優しさと計画性の無さだな』
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