プロローグ

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沢山の荷物の入った、大きめのトートバッグが肩に食い込む。反対側の肩に持ち替えて、私は緑色の木漏れ日の中を進んだ。 懐かしい道。 目を細めて先を見ると、よく見慣れた噴水が、柔らかな太陽の光を反射してキラキラと輝いていた。 あの日の事は、今でもまるで昨日の事のように思い出す。 忘れられない、忘れたくない、大切な思い出。 ふと、顔に水滴が落ちた。上を見上げると、ポツリとひとつ。またひとつ。 ――天気雨、か。 私らしい。うん、私らしい。なんたって私は雨女だもの。 私の肩を濡らす天気雨。でも歩調は変わらない。ゆっくり、ゆっくりこの地を踏み締める。 いつも傍にいてくれて、傷付いた私を励ましてくれたあの人は、私に何を見ていたのだろう。何を思ってこの道を歩いていたのだろう。 …しあわせ、だった? 雨のベールと微かな土の匂いに包まれながら、あの日の足跡を辿ると、あの時には見えなかった何かが見えてくるような気がした。
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