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疑い
二人が付き合い始める事になったのはコンパの日から数日が経過しての事だった。
そもそも彼女の方からの積極的なアプローチがなければ付き合う事もなかったのかもしれない。
それほど誠一は消極的で 内気な性格だったのだ。
なんとも情けない話だ。
誠一は自分自身にも自信を持てず、なぜ彼女は俺を選んでくれたのかを考えていた。
(もしかして、からかわれてる?)
そんな事を思いながらも彼女の事を信じたい。という気持ちが入り交じっていたのだ。
だけど、なにかスッキリしない気持ちを胸に抱いていたので彼女に聞いてみようと思い、彼女を近くの公園まで呼び出した。
彼女はいつもと変わらぬ笑顔だ。
誠一は彼女の笑顔を見る度、面白みのない日常を忘れて嬉しい気持ちになるのだった。
「今日はどうしたの?」
と伊吹が聞くと、誠一は俯きかげんで「なんで俺なんかと付き合おうと思ったの? 俺はトロくさい奴だし、何の才能もないし、何の取り柄もない男だよ。 もしかして…からかわれてるだけ?」と呟いた。
伊吹は誠一の方をジッと見つめながら「変な事、気にするんだね! 取り柄とか才能がないとか。 じゃあ…これから先、私があなたの才能とか見つけてあげるよ。だから、もっと胸を張りなさい。」と言い放ちニコッっと微笑みかけた。
誠一はこんなに優しい彼女を少しでも疑った事に情けなさを感じていた。
『ありがとう。』
誠一は初めて彼女の前で心からの笑顔を浮かべた。
「今日はわざわざ呼び出してごめん。」と誠一が頭を下げると
彼女は「気にしなくていいよ。また明日ね!」と笑顔で答えた。
二人はお互いの家に戻り、その日は眠りについたのだった。
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