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スノードーム特殊部隊『ブリザード』その中のトップを張る第一部隊に、織人は所属している。
織人がスノードームに入ったのは今から約4年前。SMSに発症したのは、ここに入る約2年前だった。
発症当時、織人の父親は中堅の建設会社を営んでおり、彼は次期社長となるべく、専門学校卒業後、父親の会社で勉強をしながら共に働いていた。
しかし、織人が仕事にもようやく慣れ、ミス無く働けるようになったその年の夏、建設中のビルを視察していた父親に、ワイヤーで吊っていた鉄骨が落下し、それが運悪く直撃。当然、助かるはずも無く、息子に後を継がせる為、これからより張り切って仕事をこなそうというその時に、48歳という若さで織人の父親は、この世を去ってしまう。
よくある不慮の事故だった。
哀しみも癒されぬまま社長不在となった会社を存続させる為、織人は急遽20歳という若さで、社長へと就任する事になった。
家族ぐるみでの付き合いで驚く程に仲が良い重役達が、彼を補佐するという形で、会社は経営を続行する事が出来、仕事にも穴を開ける事無く、一安心したのも束の間。
不慮の事故で父親を亡くすだけでも充分悲劇だと言うのに、更に彼を貶める出来事が襲いかかる。
織人が社長就任後、約半年が経とうとしていた。
重役の1人が苦労して取って来た、大口の契約がようやくまとまり、若社長としての織人の手腕が試されるという時だ。
その悲劇は、足音も無く突如としてやって来る。
会社のバックアップを担っていた大手建設会社が突然の倒産を表明。その大手建設会社に運営資金を大幅に頼っていた織人の会社も多大な被害を被り、運営続行が不可能となってしまったのだ。
被害はそれだけに留まらず、更に多額の借金までも、代表取締役であった織人1人で全てを抱えざるを得なくなってしまったのである。
SMSが発症したのはそんな時。
若くして本物の絶望を味わい、もう生きる気力すら失くしている時だった。
真冬、彼が突然の全身痛で意識を失う間際、掠れ行くその目に映っていたのは、深々と降り積もる綿毛のような牡丹雪と、自宅の屋根から吊り下がる何本もの見事で美しい氷柱だった。
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