ナイチンゲール

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 けれど、ヒステリーを起こして壁を殴ったり、窓ガラスを割られるのには困っている。原因はフローだ。  お母さん、私、外へ出てみたい。年をとるごとに、フローはその言葉を発するようになっていった。フローは私の中を窮屈に感じ始めていたのだ。  八歳の少女にとって、外で遊べない事は苦痛だっであろう。私の中では、娯楽は限られている。フローには同年代の友達などもいなかった。  代わりに毎日同じ時間、家政婦が外からやって来る。食料、衣服、その他諸々の生活用品を持って。  家庭教師もやって来る。沢山の問題集に教科書、鉛筆や消しゴムなんかを持って。  フローは彼女らが何処から来るのかが不思議だった。知りたくて一日中窓にへばりついていた事もあった。  しかしいつも彼女らはエヴァンズ家の角からやって来て、エヴァンズ家の角へ帰って行く。その向こうに何があるかは解らなかった。  そしてフローが外へ出てみたいと言う度に、フランソワーズはテレビを指差す。二日前、ニュースを見ていた時だった。アナウンサーの女が、原稿を読み上げる。
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