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玄関から持ってきたフランソワーズのサンダルを履き、芝の上に降り立つ。外に出たことの無いフローは靴を持っていなかったのだ。
降り立つと、そこには広い庭が広がっていた。あまりの開放感に、フローは身震いをしていたようだ。
恐る恐る芝の上を歩き、門の前に立った。取っ手に手をかけ、ゆっくりと押す。
黒い鉄製の門はフローには重く感じられなかったのだろうか。難なくそれを開けて、初めてフローは、私の中から外へ出た。
そして、そこでフローはウィリアムに出会った。初めて見た同年代の少年に、フローは喜びを感じた。そして遊ぶ楽しみを知った。
三十分にも満たない間しかフローは外に出なかったが、連日彼女は外へと出ていた。ウィリアムも彼女に会うために、朝早く起きていたようだった。
日ごとに仲良くなっていく幼い二人の間には、確かな関係が築かれていった。
幼いながらの恋愛感情。手を繋いで走ったり、テレビドラマで聞いた愛の言葉を語り合ったり。
いつしかフローは、私の中よりも外での方が、笑顔を浮かべるようになっていた。屈託のない、真っ白な笑顔だった。
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