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「そのことなんだけど――」
「待てやゴラァ!!」
「「!?」」
朱理の言葉を遮るように辺りに響き渡った女の怒鳴り声。それに俺達は肩を揺らして警戒した。
この近くに誰かいる。敵か味方かわからないが、それだけは確信が持てた。
「朱理、話はあとだ」
「うん」
辺りに緊迫した空気が流れる。ガサガサと揺れ始める草に、俺は携帯を空気銃に変えて狙いを定めた。
と、その時だった!
「ぅ、わっ!?」
「青空!?」
ガサリと大きな音を立てて飛び出してきたモノに俺は後方に押し倒されたのだ。とっさの事で受け身もとれず、モロに背中を打つ。慌てて飛び出してきたモノに目を向けると――。
「うぇ、マジかよ……。アイツまだ追って来やがるとか有り得ねーし」
何て言うか……、不良っぽい人だった。見事に着崩した学ランの中に派手な色のTシャツを着ていて、顔に1本の古傷がある青年。それが俺の上に乗っていた。
……正直に言うと、そろそろ退いてくれないと重さで死ぬ。
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