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それはスローモーションみたいな映像だった。ニッコリと笑っていた朱理の表情が違和感に揺れ、苦悶の表情になりつつ前のめりに倒れた。
「あ……、朱理っ!?」
迷わず俺は朱理の元に駆け寄った。今の状況が信じられなかったから……。
急いで朱理を抱き起こしてみたが、ぐったりとしていてまるで意識がない状態だ。外傷は背中にある火傷のような傷のみ。それは斜めに傷つけられていて、何か鞭のようなものでやられているようで……。
「朱理っ、朱理っ!!」
「あはっ、無理無理。それ、暫く動かないよ」
「!?」
静寂な森に響いたのは甲高い女の声。その声音にはこの状況を楽しんでいるようなニュアンスが含まれていて、俺は瞬間的にソイツが朱理をこんな風にした奴だと思った。
恐る恐る振り返ってみると、そこにいたのはやっぱりと言うべきか“悪魔”だったのだ……。
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