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「さすがにこれはその大人にとっても予想外だった。だから、すぐに子どもを追放しようと考えたの」
でも……、と朱理は言葉を濁らせて押し黙った。俺は何となくその大人がどうなったかわかったような気がした。
「……殺されたのか?」
「……うん。その大人は殺されたの。バカよね……、利用されてるってもっと早くから気づけば死ななくてすんだのに……」
「……」
朱理は遠くを見るようにしてそう呟いた。その瞳はどこか憂いを帯びているように見えた……。
俺は何となく、それから先を話してくれるように頼んだ。あまり、あんな顔は見たくなかったからかもしれない……。
「あ、うん。えっと……、大人が死んで子どもはその会社のトップに立ったわ。大人達はその子どもに屈服したのよ。恐怖もあったかもしれない、けど……一番の理由はそうじゃない。」
朱理は一旦言葉を切ってこう言った。
「お金よ」
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