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岩間秀樹を乗せた電車が、スピードを落とし駅のホームに到着する。
電車の扉が開くと、乗客達は先を争う様に駅のホームへと出て行った。
岩間は急ぐ人々を尻目にゆっくりとした動作で座席から立ち上がり網棚から荷物を降ろすと、再び座席に座り荷物を膝の上に置き、車内が空くのを待ていった。
突然、駅のホームで女性の悲鳴があがり、岩間の座る前の車両が止まっている辺りが騒がしくなった。
岩間は座席から立ち上がり、車内からホームに出ると、悲鳴が聞こえた場所では人だかりができ、医者を呼ぶ声が聞こえる。
これからアメリカまで学会に行かねばならんのに……
岩間は腕時計を見て、飛行機の搭乗時間までに、まだ、若干の余裕があるのを確かめてから、岩間の嫌いな人込みの中に入って行った。
私は医者だ
と何度も言いながら人だかりの中心にたどり着くと、一人の女性にひざ枕をした男性が岩間に顔を上げた。
「この女性……
急に血を吐いて倒れたんです……」
岩間は、心配そうに自分を見詰める男性に手の平を見せ応じると、ひざ枕され、小さく咳込んでいる女性の横に屈み意識レベルを確認しようと、彼女の顔を見た。
な……
そんな……
有り得ん事だ……
岩間は彼女にひざ枕をしている男性の顔を見る。
「彼女は倒れる前に咳込んでいなかったかね?」
「いや……
あの……
多分……」
男性にひざ枕されている女性が突然大きく咳込むと、彼女は口から大量の血を吐き出した。
ひざ枕をした男性が彼女の吐き出した血を浴び、顔を青くして岩間を見詰める。
岩間はポケットから携帯電話を取り出すと、自分の職場に電話をかけた。
「岩間だが緊急自体だ、センター長に繋いでくれ」
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