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中田は椅子から立ち上がるとソファーからジャケットを取りポケットに入れていた携帯を取り出した。
着信画面に、公衆電話、と表示されているのを確認してから通話ボタンを押した。
「白頭山の雪が溶けそうだ」
それだけ言うと相手は電話を切った。
中田は終話ボタンを押し、暗記している携帯番号を押し、通話ボタンをおす。
すると1コールもしない内に電話が繋がった。
「チェ同志、朝からすまない。
チョットした緊急事態が起こってな」
中田の持つ電話の向こうから力強い声が聞こえる。
「いえ、それよりマン同志、緊急事態って何があったんですか?」
「いやな、今朝がた新潟に入港した万景峰号に将軍様宛ての荷物を届けに行かねばならななかったんだが、ついさっき都内の電車が全てストップしちまっていてな……
チェ同志、お前さん所の事務所にライトバンがあったろ、そいつを出して貰えないかと思ってな」
「解りました。取り敢えずそちらに車を回しますよ」
「すまんな」
中田は携帯の終話ボタンを押し携帯を閉じると鈴木に声をかけた。
「どうやら山手線以外の電車も止まっちまってるらしいが鈴木君、君は何か知っているかね?」
鈴木は少し考え、「そういえば9時頃だったかな……
今から1時間位前のニュースで成田駅で異臭騒ぎがあったとか言ってましたね……」
異臭騒ぎか……
中田は暫く考えてから鈴木を連れ、近所の駐車場に留めてあるライトバンに向かった。
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