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「すまないね…此だけは分かってほしい。」
まるで赤子をあやすかのように山南は言った。
「…それがあんさんの望みなら、従います…」
再び顔を上げた女の目は赤く腫れていた。
山南はそっと女を引き寄せ瞼に口付けを落とした。
「君の願いを叶えるよ。何が良いかな…?」
【行かないで。】
これが一番の願い…
されど此を言ってしまえばまた困らせる。
「山南はんは…何故うちを抱かへんの?」
そう。
山南は一度たりとも手を出そうとしたことはない。
この島原でそんな男は一人も居ない。
だからこそ女は不安だった。
(数多の男に抱かれた女なぞ抱きたくはないか…)
そう思っていた。
しかし山南の口から出た答えは違っていた。
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