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「おい…、放せって。」
俺は右足を左右に振るが、猫は振り落とされないよう、懸命にしがみついていた。
「ニャアァーーー。ニャアァーーー。」
何度も猫は叫び声を上げる。
俺は右足を振るのをやめ、しゃがみこみ、両手で猫を持ち上げて言った。
「大丈夫だよ。
俺はお前を捨てたりしない。
お前の餌を買ったらちゃんと帰ってくるから。」
そう言うと猫は少し安心したのか、叫ぶのを止めた。
「そう言えば、まだお前の名前を決めてなかったな…。
喜べ。
今日からお前の名前は俺と同じケンだ。」
猫はケンと言う名前を気に入ったのか、俺がケンと呼ぶ度に鳴いた。
「ニャァ。」
そして俺はドアを開け、外に出ると、ケンを中に残したまま鍵をかけた。
この時はあんなことになるなんて思わなかった。
ケンの鳴き声を聞くのがこれで最後になるなんて…。
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