木枯らし

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ちりりん。 綺麗なホテルのロビーにベルの音に誘われるかのように現れた純白のウェディングドレス。 はあ… 予期せぬ美しいものを見て輝明はため息をついた。 そろそろ時間だし行くか。 このホテルに用事はない。 ただ時間的余裕を埋めるためだけに立ち寄った。 外に出た途端輝明に冷たい風が吹き付ける。 はあ… 今度は違う意味を帯びたため息が吐き出される。 輝明は大学生であり本来春休みは何者にも変えがたいほどの愉しいものであったが今は違った。 就活セミナー 面倒だとしか思わなくあまり足どりも軽くはないが何もしないと不安だから行く。 行けば自分は大丈夫な気がする。 そんな安心を得る為に輝明は北風の中歩いていた。 セミナーの会場どこだっけな。 GPS機能を使おうと携帯を取り出す。 受信メール一件の表示。 見るとそれは絵文字が一面にちりばめられ、 これでもかとばかりかわいらしく そして 「幸せそうな」メールが届いていた。
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