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年下のくせに生意気で
甘くも冷たい男の子
そんな、貴方に
下剋上。
「……遅刻だ」
時刻は、もう8時45分。
朝起きて、目覚まし見たらこんな時間。
笑うに笑えず、凄まじい速度で支度をし学校へと到着したものの遠距離電車通学の所為か着いた頃には一限目が終わり休み時間に突入していたのだった。
「……猛ダッシュしてきた意味ないじゃん…疲れたしなー……うん、サボろ」
勝手に自己解決とばかりに二時限目のサボリを決め込んだ揚羽は屋上へと向かう。
カツカツと階段を上り、屋上への扉に手を掛ける揚羽であったが、中から聞こえてきた話し声に思わず手を止める。
「わ、私……市ノ瀬くんの事が、すっ…好きなの」
どうやら、どこぞの女子が、あの有名な聖凛学園サッカー部所属の市ノ瀬 薫に告白をしているらしい。
「……アイツに告白するなんて勇気あるな」
そう呟きながらも、ぼぉっと立ち尽くしていると更に声が聞こえてくる。
「悪いが俺に、そういった気はない。寧ろ迷惑だ」
「で、でも今、付き合ってる子とかっていないんだよね……っ?」
「……ああ」
「だったら……ッ」
「別に付き合っている奴はいないが気になってる奴は居る」
「…ッ、それでも、いいの。だって私、市ノ瀬くんの事諦められない!!」
「…………」
余程、市ノ瀬が好きなのかキツク断られても、めげない女子生徒に対し、はぁと疲れた溜息を吐き黙り込む市ノ瀬。
そんな様子に揚羽はと言えば告白を行った女子生徒に少しだけ飽きれ、纏わり疲れた市ノ瀬に同情していた。
緊迫にも似た静けさを保つ中、市ノ瀬は、さも嫌そうに顔を歪めると口を開く。
「……悪いが、お前は俺の好みじゃない。目障りだ、失せろ」
「……っ、どぉして私じゃダメなのぉ?」
冷酷にも似た市ノ瀬の非情な表情と声に、とうとう女子生徒は泣きだしてしまった。
いい加減にしてくれと迷惑そうにしている市ノ瀬。
「いい加減、うざいな」
同じ同性の見苦しい姿に怒りを感じる揚羽。
「……不本意だけど、助けてやるか」
別に失恋し泣いていて縋る女子生徒の気持ちが解らない訳ではない。
だが、それ程までに好きな相手を泣いて困らしてまで縋るような自己中で相手の気持ちも考えず行動する、その様に揚羽は腹を立てていた。
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